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名作をちびちび読むシリーズ 「罪と罰」①

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photo: WokandapixPixabay

読書感想文の課題に悩める世の少年少女たちにおくります(うそ)

 

第一部 あらすじ

各項ごとにちょっと長めにまとめております

第1部 ①

ペテルブルグに住む孤独な青年ラスコーリニコフは貧しさにあえいでいました。通っていた大学は学費が払えず中退。その後家庭教師をして食いつないでいた時期もありましたが、今ではその働き口も失って3度の食事にも事欠く毎日です。
ある日、ラスコーリニコフは、以前にも一度頼ったことのある貸金業の老婆アリョーナ・イワノーヴナのもとを再び訪ねます。実はラスコーリニコフは、この老婆の存在を知って以来、ある恐ろしい計画を胸の内に燻ぶらせていました。この日の訪問の目的はむろんまた金を借りるためでもありましたが、そのよからぬ計画の「下見」も兼ねていたのです。しかしふと我に返ったラスコーリニコフは、そんな恐ろしいことを考えている自分が嫌になります。したたかな老婆相手にようやく借り入れられた金も希望した金額には程遠く、鬱々としていた彼は、老婆の家から帰る途中、慣れない盛り場に行って酒をあおるのでした。

第1部 ②

ラスコーリニコフは酒場でマルメラードフという男と出会います。マルメラードフは、初対面のラスコーリニコフ相手に自身の悲惨な身の上を滔々と語って聞かせます。彼は定職につかず飲んだくれてばかりいる男でした。かつては真面目な役人でしたが、リストラされたのを機に酒に溺れるようになり、以後ろくに働かなくなったのです。せっかく決まった再就職も長続きしません。おかげで彼の一家は極貧生活を強いられていました。肺病病みのヒステリックな妻は生活苦のストレスから絶えず夫に暴力をふるい、小さな子供たちはいつもお腹をすかせています。一家の大黒柱であるべきはずの父親がこんな調子ですから、ついには年頃の娘が売春婦になって家計を支えているというのです。マルメラードフは愛娘を売春婦にしてしまった自分の不甲斐なさを嘆きながら、その娘が身を売って稼いだお金でもって飲み歩くというどうしようもないありさまでした。しかしこんな自分でも、最後の審判が下る時、神様はきっと私を許してくださるとマルメラードフは豪語します。それを聞いていたまわりの客たちは恥知らずとばかりにマルメラードフを罵り、嘲笑するのでした。
やがてすっかり酔いつぶれてしまったマルメラードフを、ラスコーリニコフは家まで送り届けることにします。家といっても他人の家を間借りしただけのその家では、激昂した妻とぼろをまとった幼な子たちが父親の帰りを待ち受けていました。母親に折檻され泣き震える子供たち。歪んだ夫婦愛・・・。一家の惨憺たる暮らしぶりを目の当たりにしたラスコーリニコフは、帰り際、なけなしの持ち金の一部をそっと一家のもとに置いていきます。

第1部 ③

翌日、ラスコーリニコフのもとに郷里の母から手紙が届きます。そこには妹のドゥーニャのことが書かれていました。ドゥーニャは家計を支えるため、とある屋敷に家庭教師として働きに出ていましたが、その家の主人との間にあらぬ不倫の疑いをかけられ、街中の噂になるなど散々な目に遭ったようでした。しかし今ではその誤解も解け、おまけにドゥーニャのもとには良い縁談までが舞い込み、このたびその話がまとまって、めでたくドゥーニャは結婚することになったというのです。相手は45歳になる裕福なエリート文官で、今後ペテルブルグに出て法律事務所を開くことになっているといいます。「きっとおまえの力にもなってくださるはず」と母の文面は喜びと安堵にあふれていました。しかしラスコーリニコフはこの縁談話に激しい嫌悪感を覚えます。妹が母と自分の生活を助けるために、相手の人柄もすっかり見極めないまま身売りのような結婚をしようとしていると感じとったのです。手紙を読みいたたまれなくなった彼は思わず家を飛び出します。

第1部 ④

家を出たラスコーリニコフはふらふらと街をさまよいますが、しばし自分の行動理由もわからなくなるほど情緒が不安定になっていました。途中、たちの悪そうな中年男にからまれていた少女を助けますが、このときも最初の好漢ぶりがウソのように態度を豹変させ、現場に立ち会った警察官を驚かせたりもします。
やがて我に返ったラスコーリニコフは、自分が友人ラズミーヒンのもとを訪ねようしていたことを思い出します。ラズミーヒンはラスコーリニコフの学生時代の数少ない友人の一人で、人間力に富む頼もしい人物でした。

第1部 ⑤

しかし冷静さを取り戻したラスコーリニコフは、自らの窮状打破の糸口を安易にラズミーヒン一人に求めようとしていた自分に呆れます。そのときです。あの恐ろしい計画が再び頭をもたげてきました・・・。
空腹を満たそうと立ち寄った食堂で、食事ついでに酒を一杯あおったラスコーリニコフは思いのほか酔いが回り、家に帰る途中の草むらで眠りこんでしまいます。このとき彼は、年老いためす馬が群集になぶり殺しにあうというひどく残酷な夢を見ます。
最悪な気分で夢から醒めたラスコーリニコフは、やはり自分には人を殺すことなどとてもできないと改めて強く悟りますが、それでもまだあの恐ろしい計画のことを払拭できずにいる自分に激しく苦悩します。
再び家路をめざしたラスコーリニコフは、途中の広場で偶然、金貸しの老婆と同居する妹リザヴェータの姿を見かけます。彼女は冷酷非道な姉に虐げられながら暮らす気の毒な女性でした。リザヴェータは知り合いらしき人々と立ち話しているところでした。通りすがりに彼らの会話を小耳にはさんだラスコーリニコフは、明日の19時、リザヴェータが所用で外出し、家に老婆がたった一人になることを思いがけなく知ってしまいます。

第1部 ⑥

ラスコーリニコフは1か月半前に初めて老婆の家を訪ねたときのことを思い出していました。・・・彼はそのとき老婆を一目みただけでどうにもならない嫌悪感をおぼえました。老婆の家からの帰りみち、彼はある一軒の安食堂に立ち寄ります。そこで偶然にも彼は、見知らぬ隣のテーブル客が老婆とリザヴェータのうわさ話をしているのを耳にしました。彼らは老婆がいかに性悪な人物であるか、そのせいで妹のリザヴェータがどんな不遇な扱いを受けているか話し合っていました。
彼らはこんなことまで口にします。「世の中にはあの意地悪な金貸しばばあのように生きていてもなんの役に立たないばかりか、かえって社会の迷惑になっている人間がいる。一方で才能や実力があっても後ろ盾がないために、その能力を発揮できないまま埋もれていく大勢の若者たちがいる。ならばいっそあのばばあを殺して金を奪い、その奪った金で世の中の何百何千という社会の弱者を救えるとするなら、それは正しい事だとはいえないだろうか?」・・・
このところひどく迷信深くなっていたラスコーリニコフは、この1か月半のうちに自分のまわりでおきた数々の偶然の一致に、まるで天の啓示でも受けたような気持ちになります。自分のしようとしていることは「犯罪」ではない・・・。彼は計画の実施を決意します。
翌日、半日を自宅で怠惰に過ごしたラスコーリニコフは、夕方遅くになっておもむろに出支度を始めます。兼ねてから計画していたとおりに衣服に細工を施し、凶器の斧を隠し持った彼は、人目につかぬよう細心の注意を払いながら老婆の住む館へと向かいました。どこかで「19時半」を告げる時計が鳴りました。彼は少しあわてます・・・。

第1部 ⑦

老婆は、遅い時間の、しかもほとんど面識のない若者の突然の訪問に思い切り不快感を露わにしました。しかし巧みな手口で老婆の警戒を緩めたラスコーリニコフは、まんまと家の中にあがりこみ、一瞬のすきを見て老婆を隠し持っていた斧で殴り殺害します。
しかしその直後予想していなかったことが起こります。彼が老婆の金品を物色しているところに出かけていたはずのリザヴェータが帰ってきてしまったのです。犯行現場を見られ驚いたラスコーリニコフは、とっさにリザヴェータめがけて斧を振り下ろし、姉に次いで妹まで殺してしまいます。
その場から逃亡を図ろうとした彼にさらなるピンチが襲います。老婆を訪ねて二人の客がやってきたのです。約束した時間に来たにも拘わらずいくら呼び鈴を押しても中からの応答がないことにしだいに不審さを感じ始めた彼らは、「姉妹に何か起きたのではないか」と騒ぎ出し人を呼びに走ります。不審者がいた場合の逃亡に備え一人が見張り役として残されたためドアの外には出られません。ラスコーリニコフは絶体絶命の事態に陥ります。しかし思わぬチャンスが巡ってきました。見張り役が一瞬持ち場を離れたのです。ラスコーリニコフはこのすきに老婆の部屋を脱出。間一髪で逃亡に成功したのでした。

 

第一部 ひとくち感想

登場人物の複雑な心理描写などもまだまだ少なく、時系列どおりに素直にストーリーを追っていけるので比較的読みやすい印象です。いかんせんロシア人の名前が複雑なうえにやたら登場人物が多いことには苦しみます。夢の中に出てくる架空の人物のような存在にまでいちいち名前がつけられてるのでたまりません・・・。ふんちょい役めとばかりに読み飛ばしたいところですが、これも後から何か意味を持ってくるのではないかと思うとおちおち無視もしていられないところがこのドストエフスキー小説の醍醐味ともいえましょう・・・。
さて、犯行現場からまんまと逃げおおせ、まるで悪運をも味方につけたかのようなラスコーリニコフ。このあとどうなりますやら。続きが楽しみです。

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