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名作をちびちび読むシリーズ 「罪と罰」⑩

f:id:didoodah:20190827135216j:plainphoto: StockSnapPixabay

読書感想文の課題に悩める世の少年少女たちにおくります(うそ)
物語もいよいよ佳境に。がんばって読みます。

 

第四部 (5~6)あらすじ

第4部 ⑤

翌朝、ラスコーリニコフは警察署に出頭し、自分から予審判事のポルフィーリイに会いに行くという思いきった行動に出ます。表向きの理由は書類の提出(質草の返還申請)でした。でもラスコーリコフが本当に知りたいのは、自分がどこまでポルフィーリイにしっぽをつかまれているかです。ところが、この日ポルフィーリイはどういうわけか事件のことには全く触れようとしませんでした。それどころか関係ない話ばかりして、終始ラスコーリニコフを嘲けるような言動をとります。しかしこれこそがポルフィーリイの作戦でした。頭脳はすこぶる明晰なものの、プライドが高く、短気で自分を見失いやすいラスコーリニコフの性格を見抜いていた彼は、あえて事件とは関係ない話をすることでラスコーリニコフを混乱させ、苛立たせ、感情を抑制できなくなったところで自分の方からぼろを出す瞬間を狙っていたのです。ラスコーリニコフの方でもポルフィーリイの魂胆に薄々気づいていて、術中にはめられまいと必死に怒りの感情を抑えていましたが、ポルフィーリイのあまりに憎たらしい態度に最終的にはとうとういつもの癇癪癖を起し、「さっさと逮捕しろ!証拠があるなら見せてみろ」などと余計なことを口走ってしまいます。このタイミングを見計らったようにポルフィーリイは「思いがけない贈り物がある」とラスコーリコフに言いました。今度ばかりはポルフィーリイに分があったかに見えました。しかしここで思わぬ事態が起きます。

第4部 ⑥

ラスコーリニコフが絶体絶命のピンチに瀕していたところ、まわりの制止を振り切るようにして突然一人の人物が部屋に飛び込んできました。ペンキ職人のミコライでした。驚くことにミコライは、部屋に入るなり、老婆とリザヴェータを殺したのは自分だと衝撃の告白を始めます。これにはさすがのポルフィーリイも動揺して、勝手なことをするな!と、ラスコーリコフが見ている前でうっかり声を荒げてしまいます。とにもかくにもラスコーリニコフはまたしても寸出のところで追っ手の追及を逃れられたのです。
家に戻ったラスコーリニコフは、束の間おとずれた安息の中で、次なる保身の策に考えをめぐらせていましたが、ポルフィーリイの言った「思いがけない贈り物」の意味が気になり不安にさいなまれていました。そこへ不意に一人の男が現れます。それは、昨日、ラスコーリニコフの前に突然現れた「謎の男」(人殺し!と叫んだ男)でした。しかし男は昨日とは打って変わったしおらしい態度で、ラスコーリコフに「無礼なことをした」と謝り始めます。よくよく話を聞いてみると、男は、老婆の家と同じ館の住人で、ラスコーリニコフが老婆の家で不審な行動をとって庭番らともめごとになったのを現場で目撃していた一人でした。(第2部⑥)男はあのときのラスコーリニコフのふるまいがどうしても許せず「警察に届けるべきだ」と庭番たちに意見しましたが、面倒だと断られてしまったため、独自にラスコーリコフの身辺を調べることにしたというのです。男が昨日突然ラスコーリニコフの前に現れたのはそういうわけだったのです。さらに男は今日警察に出頭し、ラスコーリ二コフが来署する直前まで、ポルフィーリイの部屋で事情聴取に臨んでいたこともわかりました。しかも聴取の途中でラスコーリニコフ出頭の一報が入ると、ポルフィーリイは男を部屋の仕切りの陰に連れていき、「今から何を聞いてもだまってここでじっとしているように」と彼に命じたというのです。ポルフィーリイの言っていた「思いがけない贈り物」とは、この男のことだったのです。かといって男が事件について何か有力な証拠を握っていたわけではありません。男が知っているのはあくまでラスコーリニコフがある日突然自分たちの住むアパートに現れ、とても怪しい行動をとったということと、その腹立たしさから翌日彼の住所を訪ねていき、面と向かって「人殺し」という言葉を浴びせても、何も言い返してはこなかったという程度のことです。しかしポルフィーリイは、男をあたかも事件の重要なカギを握る人物であるかのように仕立て上げ、ラスコーリニコフを窮地に追い詰める切り札にしようと画策したのでした。しかし、まさかのミコライの犯行自供という番狂わせの事態で、ポルフィーリイの思惑はあと一歩というところで外れてしまいます。
男の話に一通り耳を傾けたラスコーリニコフは、どうやらポルフィーリイが実は何の証拠もつかんでいないらしいことを知ってほっとし、元気を取り戻します。
「さあ、またたたかうぞ」
ラスコーリニコフは、意気揚々と、一方で自分の小心ぶりを恥じながら、マルメラードフの法事に出席するため部屋を出ていきました。

 

第四部 (5~6)ひとくち感想

ラスコーリニコフポルフィーリイの二回目の対決が描かれる箇所です。
謎の男の正体もここで判明。ラスコーリコフが老婆の家で不審者騒ぎを起こしたときの野次馬の一人だったとは。もういちど読み返してみると、たしかにそれらしき人物がいます。なぜラスコーリニコフの住所を知ってるの?とも思いましたが、これも謎の男ら野次馬を前に、ラスコーリニコフが自ら住所を明かしているシーンがさりげなくながらちゃーんと書かれてありました。緻密な伏線の張りっぷりに舌を巻きます。それにしてもつくづく悪運の強いラスコーリコフ。今後どうなるのでしょう。ようやく第4部が終わりました。次回はいよいよ第5部へと突入です。