消灯時間です

消灯時間です

今日のアドリブ 気ままに書きます

当ブログではアフィリエイト広告を利用しています

読書記録/実録事件もの

 


千葉大女医殺人事件
 佐木隆三(著)

 タイトルどストレートすぎますやん

 

昭和の忘れられた事件ものを一冊。

新婚間もない20代のエリート夫婦の間に起きた事件。夫が妻を殺害した。二人は共に駆け出しの医師で、同じ大学の医局に夫は研修医、妻は研究員として勤務していた。昭和58年の出来事だそうだ。当時私はほんの子供だったけれど、この事件のことはなんとなくだが覚えている。もっとも事件そのものというより、犯人である夫の、俳優崩れのような青白い優男風の風貌がいまだ印象に残っているといった方がいいかもしれない。何食わぬ顔で妻の葬儀に参列する夫の逮捕前の映像が、当時よくテレビのワイドショーなどで流れていた。「こんな虫も殺さぬような顔してなあ」と子供ながらに思った記憶がある。

夫婦不和の延長線上で起きてしまった悲劇だったようだが、この事件は当初から謎が多いことで有名だったそうだ。実際、今回の事件ルポを読む限りでも、捜査や裁判の過程でかなりややこしい展開になっていたらしいことがうかがえる。夫が妻を手にかけたというのはどうやら紛れもない事実らしい。でもその動機はというと二転三転。夫は幾度となく供述を翻し、最終的には被害者本人である妻から依頼されての犯行、いわゆる嘱託殺人だったと主張している。でもけっきょく明確な犯行動機はわからぬまま事件は終結。犯人もすでに他界しているそうで、真相は永遠に闇の中ということになってしまったようだ。

さて、永遠の謎となった事件の真相も気になるところだが、この事件にはひとつオカルティックな噂があるらしく、個人的にはそちらの方に関心をそそられている。それは夫婦が事件当時暮らしていたという家に関する噂だ。夫婦はお互いの職場である大学のすぐそばに新築の家を建てて暮らしていた。といっても、夫婦が自分たちで建てたわけではなく、病院の経営者でたいへん裕福だった妻の父親が、娘夫婦のためにと土地から購入し建てた家だったという。二戸分の土地にぶち抜きで建てた大豪邸だったらしい。職住近接、親から贈られた新築の豪邸、といろいろうらやましいかぎりだが、実はこの家を建てた場所にちょっとした問題があったようなのだ。簡単に言うと、建ててはいけない場所に建ててしまった家、だったらしいのである。いわゆる土地のたたり的なお話である。事件が起きたのはそのせいなんじゃないか、なんていう噂が事件当時まことしやかに囁かれたというのだ。

もちろんあくまで噂だろうし、そもそもこんなオカルトめいた話は佐木隆三氏の本の中には出てこない。私は事件にまつわるそんな裏話的な話があることを、怪談作家の川奈まり子さんが語る「夜の足」という怪談で知った。今回、佐木隆三先生の超武骨な事件ルポ(特に裁判のくだりは脳みそパンクするかと思った)を手にとることになったのも、実はこの怪談がきっかけだ。事件の当事者たちとも非常にゆかりの深い場所で、すらりとした女性の足だけのオバケを見たという若者の恐怖の体験談である。探求心がお着物を着て歩いていらっしゃるような川奈まり子先生は、その足の主はひょっとするとひょっとして・・・とお考えらしい。ご興味ありましたらどうぞ。

【実話怪談】川奈まり子「夜の足」【長編】 - YouTube