消灯時間です

消灯時間です

今日のアドリブ 気ままに書きます

当ブログではアフィリエイト広告を利用しています

「翔ぶが如く(四)」司馬遼太郎

昨年末からなかなか本を読む時間がとれなくなって、チビチビ読みながらようやく4巻まで。当初の目標は「『西郷どん』が放送されてるうちに全巻読み終える」だったが、この調子では『いだてん』が終わってもまだ読んでそう・・・汗。

さて、この巻で語られるのは、下野後の西郷どんの様子、佐賀の乱、私学校の設立、外遊から帰った村田新八のこと、征台論(台湾出兵)など明治7年のできごとが中心。新しい夜明けからもう7年といえども、この頃の政府まだまだ過渡期の混乱にある感じで、とりわけ大久保の激務ぶりが際立つ巻だった。

西郷の政界からの追放は、彼を支持する多くの士族の反発を招いた。これが薩摩出身の官僚・軍人の一斉辞職&帰国につながって、鹿児島は政府にとってますます危険な土地になる。そこに佐賀の乱が起きる。大久保はこれを短期間のうちに武力でねじ伏せると、乱の余波が鹿児島に及ばないようにと、薩摩人に対する見せしめとして首謀者の江藤新平をまともな裁判も開かないまま処刑。あげくのはてさらし首にする。この大久保の鬼のごとき所業は、彼の思惑どおり、鹿児島の士族を「明日は我が身」と怖れさせるに十分足りたが、同時に「このままでは大久保に負ける」とよりいっそうその反発気運を盛り上げることにもなった。やがて鹿児島に「私学校」(司馬氏曰く「学校を称しつつも、実質的には鹿児島軍団というべきもの」とのこと)が誕生するが、このことは江藤の死と無縁ではなかったと司馬氏は語っている。結果この「私学校」の存在が西南戦争の原因を作ることになり、大久保はそのときまた非情な決断を下さざるを得ない状況になるのだから、大久保という人はなんだかやることなすこと悉く自分を追い込んでるような気がしなくもない。がその一方で、これほどえげつないリーダーシップを発動できる人でなければ、260年間続いたものをひっくり返して、国を一から作り直していくことなどとてもできなかったろうと思ったり・・・。まったく何が正しくて何が間違っているのか読めない時代だ。

村田新八は魅力的な人物。機知と思慮深さに富み、維新の人物の中でも断然垢ぬけている印象。海外視察から帰国して初めて西郷が下野したことを知らされた村田は、大久保と西郷のどちらにつくかで揺れ動くが、西郷がすでに時代に取り残された存在であることを知りつつ、あえて鹿児島に戻ることを選択する。そして西南戦争でその命を散らすことになる。もしそのまま政府に残っていたら、海外に明るい人だったというから、外交面なんかでその手腕を発揮していた人だったかもしれない。もったいなかった。

征台論(台湾出兵)のエピソードはよく知らなかったのでとても興味深かった。それにしてもあれだけ今の日本に外征は無理!と言って征韓論に真っ向反対していた大久保が、西郷の下野からわずか半年あまりでもう台湾に兵を出してたなんて。しかも主たる理由が「不平士族のエネルギー放出のため」ってどっかで聞いたような・・・。鹿児島の西郷のもとには西郷弟(従道)を通じて兵調達の相談にまで行ってるし・・・。「いったいどういう料簡なのか」と大久保の変わり身ぶりにあきれて参議を下りてった木戸(孝允)の気持ちがちょっとわかる気がする。が、さすがの大久保も、煮えに煮えたぎった不平士族の怒りのエネルギーを放出させるにはもうこれしかないというところだったのだろう。出兵は極秘のうちに行われるはずが、英米に嗅ぎつかれてさあ大変。各国との交渉では、したたかな欧米の公使らを相手に四苦八苦する日本の外交ビギナーぶりがうかがえるが、ぎりぎりのところでけっこう踏ん張れてる印象。そしてここでも待ってました!の真打・大久保が登場。外交でも大いにその手腕を発揮するを気配残して5巻へと続く。4巻は盛りだくさんでけっこうおもしろかった。
(#1 / 2019「翔ぶが如く(四)」(司馬遼太郎)finish reading 2019/3/16 )