消灯時間です

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今日のアドリブ 気ままに書きます

「本陣殺人事件」横溝正史

「本陣殺人事件」は「金田一耕助シリーズ」の第1作目なのらしい。

この表題作の他に、「車井戸はなぜ軋る」、それから「黒猫亭事件」という二つの短編が収録されている。いずれも終戦からまだ間もない昭和20年代前半に発表されている小説で、そのせいかどの話も背景に終戦直後の世情が色濃い。「本陣~」は、冒頭から何やら意味ありげな傷痍軍人が出てくるし、「車井戸~」は戦争にいった夫が豹変した姿で復員してくる話で、「犬神家の一族」の原点かとも思えるような展開の物語だ。「黒猫亭事件」では、東京郊外の色街にあるちょっといかがわしそうな酒場を舞台に、外地からの引揚者らをめぐって、戦後の混乱に巧みに乗じるようなかたちの複雑怪奇な事件が起きる。ただでさえ人間関係が入り組んだところに二匹の黒猫までが加わり、なにがなにやら、多少頭がこんがらがりそうにもなるが、なかなか読みごたえのある話だった。

新婚初夜からそろって日本刀でバッサリの惨殺死体で発見される気の毒な夫婦、二重瞳孔の不義の子、エキセントリックな青年僧侶など、どの話も横溝ワールド全開という感じだ。恐怖、退廃、悲哀に満ちている。

それにしても、朴訥で実直なイメージしかなかった「金田一耕助」に、実は、アメリカ帰りの元ジャンキーという人物設定があったとは知らなかった。驚いた。

(#9「本陣殺人事件」(横溝正史)finish reading: 2018/4/5)