消灯時間です

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「珍妃の井戸」浅田次郎

過日読んだ「蒼穹の昴」の続編。
清朝末期に勃発した義和団事件のさなか、ときの皇帝光緒帝の側室、珍妃が宮中内で何者かに井戸に投げられ殺される。史実においては西太后に殺されたというのがもっぱらの通説らしいが、この小説ではいったい誰が珍妃を殺したか?という体で話が進んでいく。真相解明にあたるのは4人の外国高官。次々と事件の当事者に会って話を聞いていくが、同じ事件を目撃しているはずなのにどういうわけか皆それぞれに証言が食い違う。何が本当で何が嘘なのか。真実探しにすっかり行き詰まってしまった高官たちは、ついには特別なルートを頼って、恐れ多くもさる場所に幽閉中の光緒帝のもとにまで事件の真相を尋ねに行くことになるが、そこには思わぬ結末が待ち受けていて・・・。ラストは正直「んなわけあるかい」とも思ってしまったが、読み物としては極上に面白く、吸い込まれるように読んでしまった。続編というよりはスピンオフっぽい印象。前作「蒼穹の昴」で脇役だった人物たちが続々と事件の証言者として物語に登場し、逆に主役級の面々は今作では証言者の回想の中にしか登場しない。

国の外側からは列強の圧力、内側では民衆の反乱・・・と大混迷する世情の中、これまた宮中の内紛に巻き込まれるかたちで非業の死を遂げることになった皇帝の美しき寵姫。今もなお故宮紫禁城)の奥深くに残るという珍妃最期の場所となった件の井戸は、写真で見る限りでは、こんなところに本当に人の体が入り込むものなのだろうかと首をひねりたくなるほどひどく狭くて小さな井戸であった。側室とはいえ一国の姫君ともあろうお方がこんな寂しげな場所で、しかもとても異様なかたちで人生を終えざるを得なかったとは・・・。すべては時代のせいだったのかなんなのか・・・よくはわからないけれども、物語のトーンとあわせてなんとも重たく複雑な気持ちになってしまった。

さて、このシリーズにはまだ続編があるという。「中原の虹」。全4巻。
どうやらとっても面白いらしい・・・ううう・・・。
この調子では積読が減るのはまだまだ先になりそうだ・・・。