消灯時間です

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フェルメール展

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友人に誘われ、フェルメール展を見に行った。
開催場所が数ある美術館の中でもひときわ狭い「上野の森美術館」と聞き、数年前に行った「エジプト展」の超大混雑を思い出して戦々恐々としていたが、いざ行ってみるとやっぱりどうして、なかなかの混みようだった。比較的空いていることを期待して夕方遅くに出かけてみたのだが、あまり関係なかったらしい。もっとも週末だったし、会期末ということもあって我々のような駆け込み客も多いせいだったのかもしれない。時間指定の入場制だというので前もってチケットは用意していったが、それでも入場までに約10分ほどかかり、館内も入口からすでに軽い芋洗い状態になっていた。

絵はテーマごとに6つのエリアに分けて展示されていたが、前半の展示室は特にせまかった。場所によってはうなぎの寝床のようなところもあって、ここにどっと人が押し寄せるものだから、なかなか絵のそばに近づくことはかなわず、ほとんどの絵が人の頭越しでの鑑賞になった。

フェルメールの絵は一番最後の6番目の展示室にまとめて飾られていた。さすがにこの部屋は他の展示室に比べると少しはスペースが広いようだったが、やはり一番の目玉の部屋なので人口密度が必然的に高まる。係員が、絵の前に並ぶ必要はございません。どうぞ好きな絵からご覧にと何度もアナウンスしてくれていたが、実際には行列の中に身を投じなければなかなか鑑賞はむずかしい。そばで「まったく日本は絵の鑑賞マナーを知らない人が多すぎるんだよね。本来絵っていうのは順番に見るもんじゃない。自由に見たい絵を好きなように見るものなんだよ」とさも聞こえよがしに講釈を垂れている人がいた。それができるならここにいる誰もがそうしていると思う。通ぶるのもいいが現状をわきまえた物言いをしてもらいたいものだ。デート中だったようだが、私ならこんな男は百年の恋も冷めるわいと思いながら、行列に身を任せたままじわじわと「リュート調弦する女」の絵の前で来ると、今度は全く身動きがとれなくなってしまった。別に絵力に惹きつけられたわけではなく、足元をなにかにがっちり固められたのだ。見るとちっちゃなキッズたちが絵の前に出ようと足にからみつくようにして人ごみをかきわけながら必死に前進している最中だった。子どもたちはたくましい。

さすがに息苦しくなってきたのでなんとか列の外に脱出し、半ば鑑賞をあきらめて後方からぼんやり人の頭越しに絵を眺めていると、心なしか人の波がひけてきたように思えた。どうやら次の回まで30分ほど鑑賞客の入場を止める時間帯があるらしく、その時間に入ったらしい。一時的に混雑が緩和するエアポケットのような時間帯のようだ。おかげで有名な「牛乳を注ぐ女」などは絵の近くでゆっくりと見ることができた。ちなみに「牛乳を注ぐ女」には「The Milkmaid」という英題がついていたが、友人はこの「milkmaid」という単語が妙にツボにはまってしまったらしく、「こんな一言で表す単語があったとは」としきりにふむふむ感心しているのでおもしろかった。人によって目の付けどころが違って楽しい。

展示室を出て売店を冷やかしていたら、フェルメールの全作品を原寸大で載せている画集があった。本物を見る醍醐味にはくらぶべくもないだろうが、数年前にやってきた美術展では「真珠の耳飾りの少女」も見れたし、個人的にはもうしばらくはフェルメールは画集でも充分かと思い、中身もよさそうなので買ってみることにした。友人の体験談によると、ヨーロッパの美術館だとフェルメールも比較的のーんびり鑑賞できるのだという。いつかオランダの美術館めぐりができる日が来るのを夢見ながら、しばらくはこの画集をめくっていることにしよう。


絵を見るにも気力・体力・時の運がいる。

追記:イヤホンガイドが無料なのと、絵のガイドが手元がかさばりがちなペラ紙ではなく、ポケットサイズの小冊子になっていたのはとってもありがたかった。