消灯時間です

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「珍夜特急1」クロサワ コウタロウ

アマゾンのKindle版で読んだのだけど、おもしろい本だった。

ユーラシア大陸を単独バイクで横断する旅に出た著者の実体験記。第1巻はそのインド・パキスタン編。タイトルも本の装丁の感じも、沢木耕太郎さんの「深夜特急」に似ている。どうやらオマージュ本らしい。

学業もそこそこに日々バイトに明け暮れ、自称出不精がゆえにたまの休みも家でごろごろしているだけだった19歳の青年(著者)が、友人に誘われるまま出かけた初めての海外(タイ)旅行をきっかけに、次はユーラシア大陸をバイクで横断してみたいと思い立つ。この時点での彼は、海外旅行はおろかバイクに関しても免許をとってまだ半年というほぼビギナーの状態。英語もカタコトだという。そんな人がいきなり単独、しかもバイクでユーラシア大陸横断なんてだいぶハードルが高そうな気もするが、しかし彼はここからすさまじい行動力を発揮する。たぶん元々、コミュニケーション能力なんかにも相当長けている方なんだと思う。壮大な旅への挑戦を決意した彼は、まずは大学に休学手続きをとると、旅の資金を貯めようと寝る間も惜しんで働き、仕事の合間にはあちこち尋ね回ったり資料を読み込むなどして情報の収集にいそしみ、バイクに詳しい友人からはそのメンテナンス技術をみっちり叩き込んでもらい、そして一番の難題であったバイクの持ち出しに関わる諸手続きの問題もすべて自力で解決し、丸2年という準備期間を経て、旅の実現にこぎつけるのである。かっこいいな。

日本を出国してからもハラハラドキドキの連続だ。慣れないトランジットでは危うく乗継便に乗り遅れそうになり、ようやく入国したインドでは、タチの悪い現地人にちょいちょいボラれだまされ、あげくのはてには日本から送った肝心のバイクが届かないという最凶のハプニングにもみまわれる。私も昔一度だけインドに行った。まあ個人旅行などできる性質ではないから、安心を買ったつもりで、現地集合型のガイド付きのツアーに入って行ったのだけれど、旅の始まり早々、ツアーの参加者の一人が夜ふけのデリー空港でいきなり行方不明になってしまうという由々しき事態が起こり、騒然となったことがあった。結局その方は数時間後に無事見つかったのだけれど、なんと白タク業者に巧みに声をかけられ、空港から連れ出されていたことが行方不明になった原因だった。ツアーに入っていてもこんな事態が起こってしまうのだから、全く油断も隙もあったものではなかったとしみじみ当時を思い出してしまった。

そんなこんな自身の体験した珍道中を振り返ったりしながら、ひさしぶりに楽しく一気読み。基本、一難去ってまた一難という感じだが、その合間に繰り広げられる、素朴で親切な現地人たちや、行く先々で出会うさまざまな国の旅人たちとの束の間の心の交流にほっとさせられる。文章もまじめな顔して冗談を言っているような感じで、節々にユーモアがあっておもしろい。北杜夫さんの「どくどるマンボウ航海記」を思い出した。

さて続きも読んでみよう。

(#17「珍夜特急1」(クロサワ コウタロウ)finish reading:2018/9/14)