消灯時間です

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「カラマーゾフの兄弟(中)」ドストエフスキー ③


「カラマーゾフの兄弟(中)」ドストエフスキー ② からのまとめのつづき

【第三部】
第ハ編 ミーチャ (中途から)

父親の家を飛び出したドミートリイは再びグルーシェニカの家へとやってきた。彼女の家では、使用人たちの間でドミートリイが来ても相手にしないよう申し合わせしてあったが、門番のうっかりミスなどから、グルーシェニカがモークロエに行った事実をいともあっさりドミートリイに知られてしまう。モークロエというのは、かつてドミートリイがカテリーナから着服した3千ルーブルで、グルーシェニカと豪遊に出かけた土地だった。憤慨したドミートリイはさらに詳しい事情を聞くため無理やり家の中に乗りこむと、女中のフェーニャをつかまえ、グルーシェニカがなぜモークロエに行ったのか激しく問い詰めた。これまで頑なに口を守ってきたフェーニャだったが、暴力的に脅されたうえ、なぜか血まみれで現れたドミートリイの姿に恐れおののき、とうとうグルーシェニカが昔の恋人であるポーランド人将校のもとへ行ったことを白状してしまう。その将校というのは、5年前にグルーシェニカを捨てた男だった。ドミートリイもグルーシェニカからその存在を聞かされてはいたが、まさか自分の知らないところで二人が復縁話を進めていたなど夢にも思っていなかった。事情を知ったドミートリイは、部屋に乗り込んできたときの激昂ぶりがうそのように、フェーニャが思わず同情してしまうほど意気消沈した様子で家を出ていく。それはかえって怖いほどだった。

グルーシェニカの家を出たドミートリイは、借金の担保として預けていたピストルを取り戻すため、10ルーブルを借りていた知人のペルホーチンの家へ行く。ペルホーチンは、血まみれで、しかも金に困窮していたはずのドミートリイが2、3千ルーブルはあろうかと思われる札束を握りしめた姿で現れたのでびっくりする。ドミートリイの様子にただならぬものを感じたペルホーチンは、血まみれの理由や、なぜそんな大金を所持しているのかなど様々なことを聞き出そうとしたが、ドミートリイは口から出まかせのような支離滅裂なことを言うばかりでまるで要領を得ない。さらにドミートリイは、これからモークロエの女のところへ行くと言うと近くの店に立ち寄り、ペルホーチンが呆れてしまうほど大量の酒や食料を金に糸目もつけず買い込むと、これも予め自分で手配してあったらしいモークロエ行きの馬車に乗り込んだ。出発の間際、フェーニャがふいに現れ、ドミートリイに、グルーシェニカをどうか殺さないでと懇願する。その様子を見ていたペルホーチンは、一抹の不安を覚え、ドミートリイにピストルを置いていくように言うが、ドミートリイは心配しなくていいと言い、フェーニャに先刻の自分の非礼を詫びると、モークロエへ向け旅立っていった。

モークロエへ向かう馬車の中、ドミートリイは様々な思いの中で葛藤していた。不思議なことに彼ほどの激情家が、新たに登場した恋敵には少しの嫉妬も敵意を感じなかった。彼はグルーシェニカの初恋の人で、彼女は捨てれらたにもかかわらずその男のことを5年の間ずっと想い続けていた。そもそも自分が割って入る余地などなかったのだ。ドミートリイは潔く身を引き、夜が明けたら命を絶とうと思っていた。そのために遺書も準備し、ピストルも装填してあった。いっそのこと夜明けを待たずに今すぐ死んでしまおうかという考えもよぎったが、やはり愛するグルーシェニカを最後に一目でもいいから眺めておきたいという思いの方が勝った。そうこうしているうちに、ドミートリイを乗せた馬車はグルーシェニカが滞在している宿屋に到着した。そこは以前、ドミートリイとグルーシェニカが豪遊した宿だった。

宿に到着したドミートリイはさっそく顔なじみの宿屋の主人・トリフォンに、グルーシェニカの様子をたずねる。グルーシェニカは、例のポーランド人将校を含め、四人の男性と一緒にいるらしかった。ドミートリイはてっきりグルーシェニカが男たちと派手に遊んでいるものと思ったが、トリフォンが言うには、一緒にいるポーランド人というのが実にけちくさい男たちで、豪遊などとんでもないということだった。しかも、グルーシェニカはすっかり落ち込んだ様子だという。ドミートリイはトリフォンに札束をちらつかせ、今夜も派手に騒ぐつもりだから大勢人を呼ぶよう頼むと、グルーシェニカたちのいる部屋へと乗りこんだ。

部屋にいたグルーシェニカは、かつて愛した男が5年見ない間に、垢まみれの服を着た、ケチでイヤミなチビデブ男に変貌を遂げていたことにすっかり幻滅し、げんなりしていたところだった。そこへ札束を抱え、大量の酒や食料を準備したドミートリイがさっそうとやってきたのだ。グルーシェニカはドミートリイの突然の来訪におびえたが、ドミートリイは「最後の夜をここでにぎやかに過ごさせてほしい」と言うと、さっそくシャンパンを運ばせそこに居合わせた人々と酒盛りを始めた。やがて、ポーランド人将校たちと賭けトランプにおよんだドミートリイは、彼らの身なりや立ちふるまいをじっと観察してきたなかでふとあることに気づき、彼らを別部屋に呼び出し、3000ルーブルと引き換えにここから立ち去ってもらえないかと取引きを持ちかけた。将校たちは「3000ルーブル」という金額に一瞬色めきたったが、ドミートリイが全額即金で用意できないことを知ると、唾を吐いて悪態をつくなど態度を豹変させた。その様子を見ていたドミートリイは、今や金に困っている将校が、財産目当てにグルーシェニカに近づいてきたに違いないことを確信する。おまけに彼らがトランプでいかさまをはたらいていたことも発覚した。グルーシェニカの想い人は今や「将校」などではなく、ちんけな詐欺師に成り下がっていた。グルーシェニカは危うく金銭目的の愛のない結婚をさせられるところだったのだ。グルーシェニカは私のこの5年間はいったい何だったのかと嘆き、本当に自分にとって大切な人は誰なのかということにようやく気づいた。

うさんくさいポーランド人たちを追っ払った後、ドミートリイが持ち込んだ大量の酒や食料で大宴会が始まった。音楽隊や通りすがりの村人たちまでもが集まってのどんちゃん騒ぎが続く中、ドミートリイはとうとうグルーシェニカから愛の告白を受ける。こうして全く思いがけないかたちで、ドミートリイの恋はついに成就したのだった。しかし甘く幸せな時間は突然断ち切られてしまう。宴のさなか、警察とその関係者たちがいきなり踏み込んできたのだ。なんとドミートリイに父親殺しの容疑がかかっているというのだった。

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(#15「カラマーゾフの兄弟(中)」(ドストエフスキー)finish reading 2018/7/26 )