消灯時間です

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「カラマーゾフの兄弟(中)」ドストエフスキー ②


「カラマーゾフの兄弟(中)」ドストエフスキー ① からのまとめのつづき

【第三部】
第ハ編 ミーチャ

グルーシェニカが昔の恋人とよりを戻そうとしていることなどつゆ知らず、彼女が自分と父親(フョードル)のどちらを選ぶかという問題ばかりに心を囚われていたドミートリイ(愛称:ミーチャ)は、もしグルーシェニカが自分の方を選んでくれたら、彼女を連れて誰も知らない遠い町へ行き、そこで二人で新しい人生を始めたいと考えていた。しかしドミートリイには先立つものがなかった。それにカテリーナにいまだ返せずにいる3千ルーブルの件も彼の良心を苦しめていた。この金はもともと、ドミートリイがカテリーナから送金を頼まれて預かった金だったのだが、ドミートリイはそれに手をつけ、グルーシェニカとの豪遊に使い込んでしまったのだった。ドミートリイは実に欠点の多い人間だったけれども、根は純真で、名誉を重んじる男だった。グルーシェニカと一緒になる前に、何としてもあの3千ルーブルだけはカテリーナに返さねばらならないと決心したドミートリイは、なんとかして金をつくろうとある投資話を思いつく。それは、父親に騙し取られてしまったが本来は自分のものである土地の所有権を3千ルーブルで他人に譲り渡すというものであり、自分に代わってフョ―ドルと裁判で争い、勝ってその所有権を取り戻すことさえしてくれれば、3千ルーブルの元手で確実に3万ルーブルの価値がある土地が手に入れられる、というなんとも苦肉の策的なうさんくさい儲け話だった。

ドミートリイは、さっそくこの話をグルーシェニカのパトロンだった老商・サムソーノフのもとへ持ち込むが、自分では相談に乗れない類の話だと断られ、代わりにその手の争議を得意とするセッターという男に会うよう勧められる。
サムソーノフが親切心から助言してくれたものと思い込んだドミートリイは、時計を売り払ったり知人から借金するなどして旅費をかき集め、馬車を飛ばしてさっそくそのセッターなる人物に会いに出かける。しかし骨折りむなしく、長旅の果てにようやく会えたセッターは終始酩酊していて、まともに話ができる状態ではなかった。あげく暖炉を燃やし過ぎた部屋で一酸化炭素中毒になりかけたり、酔っ払いの介抱をさせられるなど散々な目に遭ったドミートリイは、ようやく自分が老獪なサムソーノフに一杯食わされたことに気づく。

なんの収穫も得られず、ほうほうの体で地元に帰ったドミートリイは、その足でグルーシェニカの家に行く。グルーシェニカはこのとき例の元カレからの使いを待っているところだった。ドミートリイに邪魔されては困るグルーシェニカは、これからサムソーノフのところへ行って夜まで経理仕事をこなさなければならないと嘘をつき、ドミートリイに自分をサムソーノフの家まで送らせ、11時すぎにまたここへ来てほしいとドミートリイに迎えを頼んで彼を安心させる。しかしグルーシェニカがサムソーノフの家に滞在したのはほんの短時間で、その後彼女はこっそり自宅に帰っていたのだった。(このとき、アリョーシャとラキーチンがグルーシェニカ宅を訪問)

そんなことは全く知らず、ドミートリイは、今度は宝物のピストルを担保に知人から10ルーブルを借入れると、まずはスメルジャコフに会いに行こうとするが、実家の隣家の住人から、彼がてんかんの発作で倒れ重篤な状態にあることと、イワンがモスクワに旅立ったことを知らされる。父親の監視役を失って不安に駆られるドミートリイだったが、はたとホフラコワ夫人に借金を申し入れることを思いつき、たいして面識がないうえに、彼女にひどく嫌われていることも自覚しているにもかかわらず、身支度を整えると急ぎ夫人の家へと向かう。

ホフラコワ夫人と面会したドミートリイはさっそく、例の土地の所有権の話を持ち出して彼女に3千ルーブルの借金を頼むが、夫人にのらりくらりとかわされたあげく、お金が必要なら金鉱で事業を起こせば良い、あなたのためにもお金は貸せないときっぱり言い切られてしまう。交渉が不首尾に終わり、いらだちのあまり逆上して夫人の家を飛び出したドミートリイは、あまりの情けなさに泣きながら通りをさまよい歩いていたが、その道すがらで偶然サムソーノフ家の老女中に出会う。ドミートリイは彼女の口から、夜までサムソーノフの家にいるはずのグルーシェニカが、とっくに家に帰ったことを知らされ仰天する。ドミートリイは急いでグルーシェニカの家に駆けつけたが、彼女はすでに元カレの待つ場所へ向け旅立った後だった。ドミートリイは家に残っていた女中たちにグルーシェニカの居場所を教えるようせまるが、彼女たちが頑なに口を割ろうとしないので再び逆上し、ものすごい剣幕で家を飛び出していく。そのとき彼が小さな銅の杵をひっつかんでいったのを女中たちは見逃さなかった。

グルーシェニカの家を後にしたドミートリイは父親の家と向かう。グルーシェニカは親父のところに行ったに違いないと踏んだのだ。こっそり実家の庭に忍び込んだドミートリイは、外からそっと父親の寝室を覗いてみたが、どうにもグルーシェニカがいる気配は感じられない。確信を得るため、ドミートリイはスメルジャコフから聞き出した秘密の合図で窓枠をそっとノックしてみた。すると、グルーシェニカが来たと勘違いしたフョードルが喜び勇んで窓から身を乗り出してきた。これでグルーシェニカが来ていないことははっきりしたが、その時窓から突き出された醜悪な自分の父親の顔を見たとたん、ドミートリイは激しい憎悪の念にかられ、我を忘れてポケットから銅の杵をつかみだしてしまう。

その頃、召使の住まいでは、古参の召使であるグリゴーリイが目を覚ましていた。彼は過日ドミートリイが起こした暴力沙汰に巻き込まれて以来、体調を崩して寝込んでいたのだが、秘薬を使った治療が功を奏し、具合を持ち直していた。ふと庭の木戸の戸締りを忘れていたことを思い出したグリゴーリイは、寝床を出て庭へ向かうが、そこで闇にうごめく怪しい人影を見る。それは今まさに逃走を図らんとしているドミートリイの姿だった。グリゴーリイは必死になってその人影を追い、ようやくひっ捕まえたところでその不審者の正体がドミートリイであることを知るが、その瞬間ドミートリイに殴られ、その場に倒れてしまう。グリゴーリイは頭に傷を負い血まみれだった。とっさにドミートリイは傷の手当を試みたが、とめどなく溢れ出る血に怖れをなし、お手上げ状態になってしまう。グリゴーリイを殺してしまったと思ったドミートリイは、血だらけで倒れているグリゴーリイをそのままに、その場から逃げ出してしまった。

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(#15「カラマーゾフの兄弟(中)」(ドストエフスキー)finish reading 2018/7/26 )