消灯時間です

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今日のアドリブ 気ままに書きます

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「カラマーゾフの兄弟(中)」ドストエフスキー ①

カラマーゾフの兄弟中巻。相変わらずじわじわと地味に登場人物は増え続け、上巻でちょい役だとばかり思っていた人物が、再びひょんなところで登場してきたりもするので全くあなどれない。序盤の90ページにもわたる、ゾシマ長老最後の独白の場面の長さには驚かされたが、ここを過ぎれば、あとはミステリー的な展開が主となり、上巻よりは読みやすいかもしれない。
依然、難しいことはよくわからないのだけど、とりあえず人の本質というのは、どうやら何百年経とうが変わらないものらしいということをつくづく思い知らされながら読んでいる。

またまだ道の途中だけど読んだところまでまとめ

【第二部(続)】
第五編 プロとコントラ(続)

アリョーシャと別れた後、実家に戻ったイワンは、庭先に召使のスメルジャコフがいるのに気づく。このスメルジャコフという男は、もともとリザヴェータという白痴の乞食女がカラマーゾフ家の庭先に忍び込んで産み落とした孤児で、その後、カラマーゾフ家の古参の召使夫婦(グリゴーリイとマルファ)によって育てられたのだが、フョードルが遊びの果てに生ませた子どもなのではないかともっぱらの噂だった。イワンとスメルジャコフは以前はよく話をする仲だったが、イワンは近頃、彼の自分に対する一種独特な馴れ馴れしさがひどく鼻につくようになり、スメルジャコフを嫌うようになっていた。無視して素通りするつもりが、結局スメルジャコフにつかまってしまったイワンは、彼から自分がフョードルとドミートリイの間に立たされえらく苦労しているというような愚痴めいた話を聞かされる。フョードルは、いつやってくるとも知れないグルーシェニカの来訪を心待ちにする一方でドミートリイの来襲に怯え、自室に鍵をかけて閉じこもるなどひどく用心深くなっているようだった。召使すらも容易に近づけようとしない警戒ぶりらしいが、グルーシェニカが来たときだけは秘密の合図で知らせることになっているらしい。しかしドミートリイに脅され、スメルジャコフは、自分とフョードルしか知らないその秘密の合図をついドミートリイに漏らしてしまった、と言うのだった。また、スメルジャコフは、これからモスクワに発とうしているイワンに対し、なぜかしきりにチェルマーシニャ(フョードルがドミートリイと土地の利権問題で争っている土地)へ行くことをすすめる。さらに、その留守中に何か家で重大な事でも起こりかねないようなことをほのめかすので、その言動がイワンをますます不快にさせた。
チェルマーシニャへ行くつもりなどさらさらなかったイワンだが、土地問題の解決を任せたいと父親からもしつこくせがまれたため、しかたなくチェルマーシニャ行きを請け負うことにする。しかし出発の朝、見送りに出てきたスメルジャコフが自分に対して発したある言葉がひどく胸にひっかかったイワンは、道中、急遽チェルマーシニャ行きをキャンセルし、そのまま真っすぐモスクワへと向かった。そうとうも知らないフョードルは、自宅で満足感に浸りながら、グルーシェニカの来訪を今か今かと待ち受けていた。スメルジャコフから「必ずいらっしゃる」という確約にも近い言葉を受けたからだった。

第六編 ロシアの修道僧

アリョーシャが急ぎ修道院に戻ると、ゾシマ長老の容態は一時的に持ち直していた。しかし敬愛する師の最期の時は確実にせまっていた。ゾシマ長老は部屋に集まった客人たちを前に、自身の身の上話も含めた最後の説話を披露すると、その晩のうちに息をひきとった。

【第三部】
第七編 アリョーシャ

人々に愛された偉大な聖者であるゾシマ長老が亡くなり、誰もがその死後に起こる奇跡を期待した。彼ほどの人物なら、病を癒すなどの奇跡が起こるに違いないと皆が思ったのだ。しかし奇跡が起こるどころか長老の遺体は死後一日も経たないうちに腐敗し始め、臭いを放つようになる。かつてこの世を去った長老の中には、その遺体から腐臭ではなく芳香が漂った者もいたという逸話もささやかれる中、ゾシマ長老の遺体に起こったまさかの忌々しい現実に、修道院だけでなく街中の人々が動揺する。日頃からゾシマ長老の人気に嫉妬していた反ゾシマ派の僧侶たちは、鬼の首を取ったように故人を攻撃し、今まで長老を慕っていたはずの信者や民衆までもがその騒ぎに便乗した。人が人をいとも簡単に裏切る光景を目の当たりにしたアリョーシャは、敬愛するゾシマ長老が奇跡を起こせなかったというショックもてつだい、自らの信仰心をぐらつかせてしまう。悲しみと混乱に陥り、半ば自暴自棄の状態にあったアリョーシャは、同僚のラキーチンの誘いに乗り、グルーシェニカの家に行く。実は性悪なラキーチンにはグルーシェニカにアリョーシャを誘惑させ、真面目な彼を堕落させようとする魂胆があった。アリョーシャたちを家に招き入れたグルーシェニカは、事前にラキーチンと示し合わせていたとおり、さっそくアリョーシャを性的に誘惑してかかるが、彼の口からゾシマ長老の死を聞かされるやいなや、敬虔に十字を切り、不謹慎なことをしてしまったとアリョーシャに自らの非礼を詫びる。悪女だとばかり思っていたグルーシェニカのこの言動は、アリョーシャをとても驚かせた。今でこそ男たちを翻弄する魔性の女として名を馳せるグルーシェニカだが、かつては内気な少女であり、愛した男に騙され捨てられ、その後老商(サムソーノフ)の愛妾として囲われたことで経済的に恵まれた今の生活を築くことになるも、一時は孤独と貧困にあえいでいたこともあるという、悲しい過去を持つ憐れむべき女性であったのだった。二人は心を開いて対話するうちに互いに人として魂の部分で共鳴しあい、アリョーシャは彼女のおかげで再び信仰心を取り戻す。
この日、実はグルーシェニカはある知らせを待っていた。どうやら彼女はかつて自分を捨てた元恋人のポーランド人将校から復縁を迫られているらしかった。グルーシェニカは知らせが来次第、すぐにでも彼のもとへ飛んでいくつもりになっており、そのためにドミートリイからよからぬ干渉を受けぬよう、彼に嘘をつき、しばしの間身を隠しているようだった。やがて、アリョーシャたちの訪問中に元恋人からの迎えの馬車が差し向けられてくる。別れ際、グルーシェニカはアリョーシャに「ドミートリイのことがほんのひと時だけ、一生忘れないでいてほしいほど本気で好きだった。そのことを彼に伝えてほしい」と言った。
自らのもくろみがみごと不首尾に終わって憤慨するラキーチンと道の途中で別れたアリョーシャは、一人修道院に戻ると一心不乱に祈り続けた。やがて疲労から祈りながらつい寝入ってしまったアリョーシャは、そのまどろみの中でゾシマ長老の幻に会い、言葉を交わす。このときの神秘的な体験は、アリョーシャの人生を一変させるほどのものになった。彼はもうかよわい青年ではなかった。一生変わらぬ堅固な闘士であった。
三日後、アリョーシャは修道院を去った。それは「自分の死後は俗世に戻るように」と言っていたゾシマ長老の生前の言葉にかなうものだった。(つづく)

(#15「カラマーゾフの兄弟(中)」(ドストエフスキー)reading in progress )