消灯時間です

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今日のアドリブ 気ままに書きます

「真実」梶 芽衣子

梶芽衣子さんといえば有名なのが、映画「女囚さそり」だが、残念ながら私はリアルタイム世代ではない。私の中での「梶芽衣子」といえば、カラオケ本で知った「怨み節」という何やら空恐ろしげなタイトルの歌であり、鬼平犯科帳の「おまさ」であり、それから少しさかのぼって、80年代中盤頃に大映ドラマに出まくっていた頃の梶芽衣子さんである。その頃のドラマの中の梶さんは、主人公の堀ちえみをいじめるとか、たいがい意地悪でおっかない、もしくはワケありの幸薄い女性といったような暗い役ばかりだった。笑っているところを見た記憶がほとんどない。だけどよく見ると、子どもでもすぐそうとわかる超がつくような美人さんだ。この人はいったい普段はどんな感じの人なんだろうと、子供ながらに素の顔が気になってしょうがない、謎めいた芸能人の一人であった。

そういうわけだから、彼女が実は60~70年代に日活や東映などの映画で大活躍していた女優さんだったということはずいぶん後になって知った。有名な「さそりシリーズ」をはじめ、その頃のお姿を写真や映像で拝見すると、十中八九刃物か銃を構え、血しぶきを浴び、ときには切断した腕までぶら下げてたりもするが(映画のワンシーンです)、まあそのたたずまいのカッコいいこと。当時の名だたるハリウッドやヨーロッパの女優の中にポッと混じりこんでいても全く見劣りしなそうな、何かこう世界共通的な魅力がある。映画監督のクエンティン・タランティーノが彼女の熱狂的なファンで、彼の代表作「キル・ビル」が梶さんをオマージュした作品だというのは有名な話だが、海外でも人気が高いというのもなるほどうなずける話だと思った。

そんな梶芽衣子さんだが、そういえば長いこと「鬼平犯科帳」以外ではあまり見かけることがなくなっていた。それが近年バラエティ番組に出演し、実は陽気でおしゃべりという意外な素顔を披露したことで話題になり、ここにきて人気が再燃しているようだ。そしてついにはこの自伝本が出た。大映ドラマに夢中になり、ミステリアスな「梶芽衣子」が気になってしょうがなかった子どもの頃の私にとっては、とても信じられない奇跡の様な展開である。

「媚びない めげない 挫けない」
梶芽衣子さんの人生のモットーらしい。
とにかく愚直、まっすぐ。生来の生真面目さとど根性で、自らの役者道を貫き通してこられたような方だ。あざとさとかいやらしさとかいうのを全く感じない。良い意味で芸能人っぽくない感じの人である。だけど伏魔殿のごとき昭和の芸能界。こういうタイプの人が生き抜いてくるには相当苦労があったのではないかと思う。特に、書中で語られる映画「鬼龍院花子の生涯」の製作をめぐる裏話には、一見華やかな芸能界のダークな裏の顔を見せつけられたかのようでゾッとした。もっとずるく器用に振る舞えていたら、もしかしたらこの人はもっとすごいことになってた人なのかもしれない。だけどそういうことをしない。己のことより、良い作品、良い芝居を生み出すことに心血を注ぎ続けてきた人。めちゃめちゃカッコいいんである。だけどおそらく当のご本人は自分のカッコよさにそれほど気づいてなさそうだ。そこがまたカッコいいのである。

今年71歳を迎えたという梶さん。
28年出演し続けた「鬼平犯科帳」が終わり、心にぽっかり穴が開いたような時間もあったようだが、70歳からのリスタートとしてますます仕事に精力的なようだ。年齢を重ねるにつれしだいに露出が減っていく役者さんたちも多い中、この活躍ぶりはすばらしいと思う。最近はバラエティーやトーク番組で、時々はじけた姿を見れるようになったのもファンとしてはうれしい。
カッコいい人生のお手本として、これからもっともっと輝き続けていただきたい。
この本は宝物にします。

(#8「真実」(梶芽衣子)finish reading: 2018/4/3)